ヘッドホンのコード交換によるクロストークの低減
2010/12/16作成

この前、近所の家電量販店でVictor HP-RX700というヘッドホンを購入しました。
このヘッドホンは一般的なオーバーヘッド型で、直径3.5mmの3極プラグを採用し、コードは左側から1本だけ出ていました。
実はこのようなプラグとコードのものはコード内部のインピーダンスにより音質が低下します。
インピーダンスとは抵抗のようなもので、ヘッドホンのドライバ(振動板)のインピーダンスと合わさって分圧抵抗を構成し、分圧された電流が反対側のドライバに流れ込むことで、本来片側からしか聞こえないはずの音が両方から聞こえるといった現象が起きます。
この現象をクロストークと言い、音質を計る一つの指標となります。
これを解消するには、プラグを2個使用する、いわゆるバランス駆動を採用すればよいのですが、製造コストや利便性の点で劣るため、ほとんどのヘッドホンやCDプレイヤーなどでは3極プラグのみが装備されています。
そのため、プラグ内部の抵抗やコードの抵抗が左右のチャンネルに対する共通インピーダンスとなり、音質を低下させる原因になります。
共通インピーダンスは一般的に1Ωから3Ω程度ですが、その内訳は、プレイヤー内部のアンプの回路のGNDの抵抗が0.01Ωから0.1Ω程度、プレイヤーとプラグの接触抵抗が0.05Ωから0.2Ω程度、プラグ内部の抵抗が0.01Ωから0.05Ω程度、コードの抵抗が0.5Ωから3Ω程度とインピーダンスの大部分をコードが占めています。
上記のようなヘッドホンのコードは細長く、GNDのコードが左右共通なため、このように高い共通インピーダンスを持ちます。
共通インピーダンスを下げるために、コードを太く短くして抵抗値を低くすることもできますが、一番効果があるのは左右のチャンネルの共通部分を無くすことです。
そこで今回は標準のコードをGNDが左右で分離されたものと交換してみました。

交換するコード

今回は交換するコードとしてSONY RK-G336を使用しました。
線が4本入っているものであれば何でもよいのですが、せっかくなのでOFC線と金メッキプラグのオーディオケーブルを使用しました。
これを適当な長さで切断します。

イヤーパッドの取り外し

ここからは一部HP-RX700固有の話になります。
HP-RX700のイヤーパッドを取り外すには、まず左ユニットの前側のパッドが少し薄い部分の内側に指を入れ、外に向かって引っ張り、ユニットから外れたらその位置より少しずつ後部側に向かって指を入れて外していきます。

イヤーパッドの取り外し

イヤーパッドのあった面にねじが3本見えますので、プラスドライバーですべて外します。
ねしを外すと蓋が取れますので、中の配線を切らないよう慎重に蓋を外します。

左ユニットの配線

半田ごてを用意し、写真のL、R、LユニットのGND、RユニットのGNDへの線を取り外し、コードの結び目を解いてユニットの下部から引き抜きます。
新しいコードを下部から通し、Lの場所に新しいコードのL(RK-G336では白)を、Rの場所に新しいコードのR(RK-G336では赤)を、LユニットのGNDの場所に新しいコードのL側のGND(RK-G336では白の線の周りの銅線)を、基板の外でRユニットのGNDへの線に新しいコードのR側のGND(RK-G336では赤の線の周りの銅線)を半田付けします。

完成

完了したら元通り組み立てます。
新しいコードが太すぎたため、元のコードが通っていたチューブには入らず、木工用ボンドで固めました。

厳密な測定は行っていませんが、片側のチャンネルに1KHzの正弦波を出力し、同位相で反対側のチャンネルに1KHzの正弦波を出力し、反対側に漏れた音が打ち消しあって聞こえなくなるように音量を調整すると実際に漏れている音量が測定できます。
聴覚による測定なので厳密な数値は出せませんが、±3dB程度の信頼性はあると考えてよいでしょう。
共通インピーダンスに比べ各チャンネルのインピーダンスは非常に大きいためテスターによる測定が容易なので、音量差は左右のインピーダンスの比から計算しました。
周囲の音がうるさかったため、私の耳では-58.0dB未満の音を判別できませんでしたが、少なくとも27.5dB以上は改善されたことになります。
左右に大きく振られた音が不自然に聞こえるようになりましたが、全体として繊細さが増し、音が左右に直線的に広がる感じがします。

交換前交換後
クロストーク-29.5dB-58.0dB未満
左右の音量差-0.22dB-0.23dB


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